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大分地方裁判所 昭和29年(レ)19号 判決

事実

甲は乙に対し五万円を弁済期昭和二十八年五月二十五日、利息月五分、ただし一カ月に満たない月も端数日を切上げて一カ月と計算する約束で貸与した。弁済期経過後も支払がなかつたので、昭和二十九年一月七日乙は甲に対し従来の遅延損害金として元本五万円に対し月五分の割合による金員(但し昭和二十八年五月分については利息と損害金を通じて月五分とし、昭和二十九年一月分については一カ月分とし計算)の支払いを約した。そして同日右の債務合計七万二千五百円のうち六万六千五百円について、これを元本とし利息月五分、弁済期を定めない準消費貸借契約を結んだ。そこで甲は乙に対し六万六千五百円と昭和二十九年一月八日以降の利息、損害金を月五分の割合で支払いを求めた。

乙は右の準消費貸借は旧利息制限法に違反し一部分は無効であると抗争した。

裁判所の判断

まず元本五万円の消費貸借について、甲は利息損害金を二万二千五百円と計上しているけれども、弁済期は五月二十五日であつたから五月分の利息は日割計算によるのが相当である(但し特約あれば格別)。そうすると利息は二千十六円となるが、旧利息制限法に違反するので年一割の限度に引下げると三百四十二円となる。

昭和二十九年一月七日に弁済期後の損害金を月五分としているが、これは将来における損害の賠償額の予定ではないから旧利息制限法第五条の適用を見るものでなく、また月五分の利率は公序良俗に反するものでない。

昭和二十九年一月一日から一月七日までを一カ月として計算すること(日歩七十一銭四厘)は公序良俗に反する。百円につき日歩三十銭が相当であるから、七日分千五十円を超える部分は無効である。

結局準消費貸借の元本としたうち三千百二十四円は無効である。

以上の理由で元本六万三千三百七十六円とする限度で準消費貸借は成立したものとし、甲の請求を一部棄却した。

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